龍シリーズ|辛抱強く・・・

平安堂のシンボリックな商品の1つに「龍シリーズ」がございます。

金の刷毛目を大胆に描いたデザインとなり、世代を問わず、和洋を問わず使え、お客様にも大変に好評を頂いている弊社の看板シリーズです。


(黒+金という伝統的なカラーリングですが、和洋を問わずにお楽しみ頂けるデザインです)

この龍シリーズ。
正確なデータが残っていないのですが、今から35年くらい前、1980年頃に商品化されています。


(こちらが記念すべき第1作目。現在でも販売しております。かなり大胆なデザインですよね)

(真上からの写真だと何か分からないですよね。大きめのサラダボウルになります)

当時は、まだ日本橋に本店を構えていた時代です。
店舗も古い趣きで、一見さんお断りではありませんでしたが、そうそう一見さんが入ってくるような感じでのお店ではありませんでした。

そんな中、この大胆なシリーズが投入された訳ですが、当時は、本当にまったく売れなかったようです。

一般的に、まったく売れなければ廃盤になっていくのだろうと思いますが、先代は、龍シリーズを諦めることなく信じ続け、常にカタログなどでもスペースを割き続けていました。

そこそこ売れるようになるまで10年。
爆発的に売れるようになるまで20年。

なかなか根気のいることを平安堂はやり遂げたなぁという感じです。
私が入社した頃は、もう、わりと売れる時代でしたので、そんな背景は知らず、今風でいい商品だなぁと思っていた感じです。

時代が追いついたと言えば格好良いですが、食器の選択はわりと保守的な判断になりますので、時代が追いついたというよりも、見慣れてきたとか、購買世代が1世代若返ったなどの要因かなと思っています。

この教訓と言いますか、経験がありますので、平安堂は、わりと「売れる売れない」で商品価値を判断しない文化が身につきました。
もちろん、商売ですから綺麗事だけでは食べていけません。
良いと信じた品物も、どこかで廃盤というか見切りをつけないといけないことは多々あります。
ただ、おそらく、他の企業様よりは根気強く、自分たちの考えたデザインが受け入れて貰えることを信じて待てる企業文化が醸成されていると思いますし、弊社のストロングポイントになっているのではとも思います。

この「龍シリーズ」、製作テーマがあるのですが、少し面白いので合わせてご紹介します。

蒔絵師(漆器に絵をつける職人)の仕事が激減したという背景がありました。
漆器は残念ながら、ライフスタイルの変化などから徐々にマーケットは小さくなってきている訳ですが、日々使うお椀が激減した訳ではありません。
お客様をもてなす、きらびやかな蒔絵の入った漆器が一番ダメージを受けました。
つまり、蒔絵師の仕事が激減したということです。

先代は「蒔絵師の仕事を確保したい」
そういう想いの中で、現代のライフスタイルの中で活きる蒔絵とは何だ??と、デザイナーと共に悩みに悩んで生まれたデザインが「龍シリーズ」です。

デザインがあって生まれた商品ではなく、蒔絵師を活かすために為に生まれたデザインということになります。
プロダクト開発をしている方からみたら、とても珍しい商品開発アプローチと感じて頂けるのではないかと思います。

「龍シリーズ」から学んだことは根気。
自信を持ったデザインである以上、簡単に諦めることなく、お客様に理解して頂けるまで頑張るという信念。
そして、蒔絵師に仕事を作りたいという逆説的なアプローチで、会社を支えるまでに育った「龍シリーズ」。

今後も、平安堂のシンボリックなラインナップとして、色々と新しい取り組みを行いたいと思っていますのでご期待ください。


(こちらのサラダボウルが歴代No.1の人気。こちらを超えられるような開発をしたいですね)
こちらの品物は、サラダボウル昇龍。詳しくはHPをご覧ください
こちらの商品を使ったレシピ紹介はこちら

=過去の投稿=
0|プロローグ
1|めし椀のススメ
2|黒越誠治という男
3|なぜ漆器が栄えたのか?
4|ヒルサイドテラス50年の価値(1)
5|ヒルサイドテラス50年の価値(2)
6|ハイジュエリーと漆

ABOUTこの記事をかいた人

漆器 山田平安堂とHeiando Barの代表取締役。 昔はお酒が飲めなかったのに、今ではお酒マニア。 漆器とお酒の魅力を伝えます!