「お勧めの漆器は?」
と、よく聞かれるのですが、私は決まって「めし椀」と「ランチョンマット」をお勧めしています。
私は、数多い木製品のお勧めポイントの中で、「断熱性」と「吸音性」の2つが、実際に使ってみると「分かりやすい良さ」だなと思っていまして、この2つを推すことが多いです。
断熱性は、熱いものを入れたときに、手や唇にくる温度感の優しさです。
一番身近なものはお椀、汁椀ですが、まあ、それでは平凡ですし、平安堂の推しアイテムである茶碗の漆器版「めし椀」をお勧めしています。
(「めし椀」のコラムも是非お読みください)
吸音性は、平たく言えば「かちゃちゃした耳に障る音がしない」ということでして、木製品や布製品が優れていまして、陶磁器類やガラス器などは少し気になります。
前のコラムで、この吸音性に着目し「茶托が好きなんです」というコラムを書いておりますが、茶托は、いま、必要度の低いアイテムになっている部分は否めなく、普段の生活に根ざした「ランチョンマット」をお勧めしています。
今回は、この「ランチョンマット」の魅力」をお伝えしたいと思います。
ランチョンマットとお膳
漆器屋や和食器屋としては「お膳」という表記の方がしっくりくる部分もございますし、平安堂の敷物にも「お膳」の品名が付いている品はございます。
どのように区別しているかと言いますと、ランチョンマットと表記している敷物は「縁のないもの」となり、「お膳」と表記している敷物は「縁があるもの」となっています。
この定義が正しいのか分かりませんが、平安堂の分類上はそうなっておりますし、皆様にとりましても、それほど違和感はないかなと思います。
機能に大きな差はありませんが、一昔前に比べますと、お膳の比率がぐっと下がり、ランチョンマットがメインになっています。
ラインナップ数としてみると、多少ランチョンマットが多い程度ですが、販売数量で見ますと10倍、20倍くらいの違いがあると思います。
これには2つ理由がありまして、1つは洋食器をお使いになるケースが増えていること。
もう1つは販売価格が抑えられるという純粋な価格面のメリットとなります。
和食器は比較的小ぶりな皿や小鉢が中心なのですが、洋食器はサイズが大きいケースが多く、縁があると、器と縁が干渉してしまうことがございます。
縁がない方が、器のサイズを気にせず使いやすいという側面があります。
また、縁のないランチョンマットは、平たく言えば1枚の板で作れます。
縁のあるお膳タイプとなりますと、構造上、5枚の板を組み合わせて作ることになりますし、内側の隅に漆が溜まってしまいがちですので、木地を作る手間、塗る手間が増えてしまいまして、販売価格も高くなってしまいます。
縁があることで、お盆のように運べるメリットもありますし、縁があった方がフォーマルな印象も出せるのですが、上記の理由で、現在はランチョンマットが主流です。
ランチョンマットのススメ
皆さまは、ご自宅で食事をされる時、漆器に限らずではありますが、何か敷かれているのでしょうか?
私は、漆器屋として生まれ育ちましたので、実家でも今でも、必ず漆器を敷いて食事をしています。
むろん、漆器の方は少数派だろうとは思うのですが、どのくらいのご家庭で、敷物を使われているのか実に興味深いです。
一般にランチョンマットと言えば、やはり布製を使われている方が大半なのではないかなと思います。
最近では、プラスティック樹脂系のものもあるのだろうと思いますし、料理屋さんでは紙が多いですね。
まず、敷物・ランチョンマットを敷く意味ですが、これは、「食卓を傷めない」ということが第一義だろうと思います。
漆器ではあまりありませんが、陶器などですと、底面がザラついていることがございますし、器の上げ下げの時に強くぶつけてしまうこともあるでしょうから、長く使う前提のダイニングテーブルを傷つけない為には必要になります。
この他、「汚れから守る」「フォーマル感、おもてなし感、特別感を出す」という意義もありますし、飲食店では「清潔感」という部分もあると思います。
どれくらいの方が、日々、敷物を使われているのか分かりませんが、個人的には、何かしらの「敷物」はあって良いのだろうと思っています。
塗りのランチョンマットも良いですよ!
大半の方は、布製などのランチョンマットを使われていると思います。
というよりも、漆器のランチョンマットを選択肢として思い浮かばない方が多いのではないかと思います。
是非、このコラムを読まれたら、今後の選択肢に「漆器のランチョンマット」を選択肢にお入れして頂きたいのですが、漆器の敷板のメリットは、意外なことに「お手入れが簡単」ということです!!
一般的に「漆器はお手入れが大変」というイメージを持たれている方が多いと思いますし、そのような一面があることも事実ですが、敷板、ランチョンマットの漆器は、布製よりもお手軽です。
布製であれば、定期的に洗濯をしないといけないと思いますが、塗り物であれば、基本的には「拭けば良い」ですし、気になる方は、たまに洗剤で洗ったり、除菌スプレーなどすれば良いと思いますが、洗濯機を回したり、つけ置きしたりすることに比べれば随分と楽なのではないでしょうか?
プラスティック樹脂系もお手入れは楽そうですが、吸音性という部分では、布と木が優位だと思いますので、機能面、お手入れ面において、塗り物の敷板・ランチョンマットは優秀だと思います。
この他、塗り物の良い部分は、「フォーマル感、もてなし感、特別感」の演出で秀でていると思います。
むろん、「かさばる」という部分、つまり保管場所という意味で劣ってしまいますし、1枚では感じませんが、数枚となると結構な重さになりますので、持ち運び面は多少不便です。
(私は隙間に立て掛けてますので、皆様が思っている程、場所は取りません)
このように、多少の不便はもちろんあるのですが、私が強く塗りのランチョンマットをお勧めする理由となります。
最後に
ランチョンマットをここまで語るコラムも珍しいかもですね。笑
書いていたら楽しくなり、すっかり長文になりました。
まだまだ語れますが、そろそろ終わりにします。
「めし椀」と「ランチョンマット」は、本当に、私が色々な方に、色々な時にお勧めをしている品ですので、想いをぶつけられてすっきりです。
どの品にも、メリット・デメリット、長所・短所はあると思いますが、皆さまに「塗りもののランチョンマット」という選択肢が、引き出しの一つとして組み込まれましたら幸いです。
お正月も近くなってきました。
秋冬の食卓からお正月までは、漆器が重宝する季節です。
塗りものの温かみをお楽しみください。
【お膳・ランチョンマットのリンク集】
ランチョンマット 桐目
ランチョンマット 刷毛目
ランチョンマット くるみ