茶托(ちゃたく)について考える

みなさま、茶托(ちゃたく)を読めましたか?
また、何を指しているかお分かりになりますか?

茶托とは、湯呑の下に敷くお皿のことを指し、英語で言えばカップ&ソーサーのソーサーに当たるものです。

湯呑の下の漆器が茶托です

私が漆器に関わり始めて20数年が過ぎましたが、残念ながら最もマーケットが小さくなってしまったものが茶托かなと思います。
私は茶托が好きでして、漆器の良さが凝縮されていると思っているのですが。。

今回は、そんな茶托のお話です。

茶托が廃れた理由

一番大きな理由はライフスタイルの変化でしょうか。
ライフスタイルの変化にも2つの要因がございまして、1つは「あまりお客様を自宅に招かなくなった」ことが挙げられます。
やはり、茶托はお客様のときにマナーとして使う部分ございます。
茶托好きの私も自宅でお茶を飲むときに、茶托を使わないです。
もう1つの理由は、洋食器であるティーカップや、気軽に使えるマグカップ、手軽なコースターなど選択肢が格段に増えたこと。

このようなライフスタイルの変化により、一昔前は必須のアイテムであったのですが、現在においては優先度が下がり、もはや茶托のないご家庭もザラにある状況かなと思います。

茶托の良さ

茶托には、マナー面や実用面からみて不可欠な機能がございます。
洋食器でも一緒だと思いますが、人様にお出しするとき、口の触れる部分や、それに近いところを手に持つことはマナー的に好ましくありません。
また、基本的に熱いものが入っていますので、器そのものを持つこと自体にリスクがあります。
マナー面からみても、実用面から見ても、やはり茶托なりソーサーは必要な器と言えます。

漆器の茶托

茶托と一口に言いましても、現在では様々なものがございます。
昔は、茶托と言えば漆器オンリーに近かったと思いますが、陶磁器の茶托、ガラスの茶托、金属のものと色々な素材がお選び頂けます。

が、やはりここは「茶托こそ漆器一択」とお伝えしたいと思います。

平安堂の茶托は木製品のみの扱いなのですが、木製品の良さの1つに「音を吸収する」がございます。
この表現が正しいのか分かりませんが、私はそのように感じていますし、現実的に、木製品は音が静かです。
洋食器は磁器や金属が主体ですので、どうしても食器で起こるカチャカチャした音が出てしまい、洋食器も好きな部分は沢山ありますが、この「音」ということに関しては好きになれない部分です。
湯呑は陶磁器であっても茶托が漆器(木製品)であることにより、「不必要な音」がなくなり、その空間が少し素晴らしくなると思います。
漆の塗装皮膜も、一般的な塗料に比べますと肉厚ですので、その面でも吸音性が高くなっています。

この他、木製であることで軽量に仕上げることができ、実用性も高まる。
割れるリスクが少ないので、長くお使い頂けるなどのメリットもございますが、やはり、一番の推しポイントは「音」の部分ですね。

私の一番好きな長方形の形。実にエレガントだと思います。

私のように生まれ育ちが漆器屋ですと、みなさまより漆器に触れる機会が多いものですから、外で違う素材に触れると違和感を感じることが多くなります。
湯呑とお揃いの陶磁器の茶托。
おそらく、みなさまにとっては普通のシーンなのだろうと思います。
陶磁器屋さんで湯呑を購入するとき、お揃いの茶托が付いていれば合理的ですし、手間も省け、そのセットをご購入してしまうことも理解できます。
ただ、私は陶磁器の茶托を初めて使ったときは、違和感しか感じなかったです。
たぶん、レストランとかホテルとか、そのような場所だったかと思います。
出てきた時は特に気になりませんでしたが、湯呑を置いた瞬間にカチャっと高い音が出たときに感じた違和感は今でも覚えています。
もちろん、小さな音でしたが経験のない音でしたので印象に残っています。

編んだものに漆を塗った茶托。過去の作品です。

私は食器屋ですので、陶磁器もガラス器も好きです。
他社様を否定する気もありませんし、他社様で好きな器も沢山ございます。
ただ、茶托は漆器が一番!
あくまでも、私の私見ですが、今回は「茶托は漆器が一番」というお話でした。

平安堂の茶托一覧ページはこちらです。

ABOUTこの記事をかいた人

漆器 山田平安堂とHeiando Barの代表取締役。 昔はお酒が飲めなかったのに、今ではお酒マニア。 漆器とお酒の魅力を伝えます!