遊び心|時代を超えて・・座興盃

食器に限りませんが、実用性を追求した品物がある一方で、ちょっと肩の力の抜けた品物もあります。
私は、それらを「遊び心のある品」と呼んでいまして、結構、そういう品々が好きだったりしています。

「遊び心」と勝手に呼んでいますが、読んで字のごとく「遊び」のある品物だけではなく、私の中では、冒頭に書きました「ちょっと肩の力が抜けた品」であったり、作り手の「実用性の追求とは異なる価値観」が品物に表現されているようなものも含めて「遊び心」に溢れた品物だと思っています。

食器に限らないと思いますし、かくいう平安堂もそうですが、世の中の品々は、機能中心のプロダクトが増えてきていると思います。
それを否定する気はありませんが「遊び心」ある品は、皆様の生活に機能という付加価値以外の「うるおい」を与えてくれると思っています。

今回は、弊社のラインナップの中で最も「遊び心」に溢れた「座興盃」をご紹介いたします。

座興盃

これは私が企画した品ではなく、弊社で50年くらい前から販売している、平安堂の中でも屈指のロングセラー商品です。
まず「座興盃」という商品名が良いですよね。誰の命名か、今となっては分かりませんが良いネーミングだなと思っています。
そして「橙」(だいだい)をモチーフにした外観。
橙は代々と語呂があうので、「代々繁栄していく」という縁起物です。
ざらざらとした乾漆(かんしつ)という技法を用い、橙の皮の質感を表現しているところや、葉が少し虫に喰われている漆絵などもアクセントになっていて好きなポイントです。

中には入れ子になっている小さな盃が3つ。
ケース部分も盃になりますので、合計5つの盃になります。
その盃には、「松竹梅鶴亀」の吉祥文様が描かれています。
1つの盃に5個の吉祥柄が描かれているのではなく、1つに1絵柄。
つまり、松の盃があり、鶴の盃があるということになります。

秀逸なのは、付属の漆器製サイコロ。
このサイコロにも「松竹梅鶴亀」が描かれていまして、サイコロの出た目が亀だったら、亀の盃で呑むということになります。

そして、更に秀逸だなと思うのは、サイコロの最後の1面。
松竹梅鶴亀で5面ですので、最後の1面には「うた」と書かれています。

「歌を詠む」でも良いですし「歌を歌う」でも良いと思いますが、なかなか小洒落てますよね。

サイコロを振り、盃が決まり、酒を酌み交わす。
「うた」が出たら盛り上がる。
使うシーン、楽しげなシーンが品物を見ているだけで想像できる。
なんか、これって素晴らしいことに思えます。
「遊び心」に溢れた品だと思っています。

私が平安堂に入り、この品物を初めて知った時は「なんて粋なんだ!!」と思い、感動すら覚えました。

50年間に渡り売れ続けている。
これは凄いことです。
お客様が20年くらいで1世代と思えば、3世代くらいに渡り評価されていることになります。
「世代を超えて」「時代を超えて」というものは、こうやって作れれていくんだなぁと感じている次第です。

こちら、製作が意外と難しく、作り手を変えながらなんとか製作を継続していますし、そのような背景ですので欠品の時も多く、買いたいときにご購入できないなど、ご迷惑をかけてしまっております。
工房からも「作るのが大変で製作を中止して欲しい」などリクエストが来たりもしていますが、ずっと残しておきたいと思っている品の一つです。

これからも、こちらの座興盃を大事に、弊社のような小さな企業からでも「世代を超え、時代を超え」愛され続ける品を作り続けていきたいと思います。

座興盃の商品ページはこちら

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ABOUTこの記事をかいた人

漆器 山田平安堂とHeiando Barの代表取締役。 昔はお酒が飲めなかったのに、今ではお酒マニア。 漆器とお酒の魅力を伝えます!