ヨーロッパで、その質、量ともに随一と呼ばれている漆器コレクターは、かの有名な「マリー・アントワネット」です。
その素晴らしい漆器コレクションは、現在、ルーブル美術館、ギメ美術館、ヴェルサイユ宮殿美術館で見ることが出来るようです。
中世、シルクロードを経て、数多くの漆器がヨーロッパ富裕層を熱狂させていたのですが、今回は、その中でも屈指の「マリー・アントワネット漆器コレクション」を通じてお話したいと思います。
「私はダイヤモンドより漆器よ」
マリー・アントワネットの漆器コレクションのスタートは、マリー・アントワネットの母「マリア・テレジア」の影響です。
マリー・アントワネットの漆器コレクションの半分くらいは、母マリア・テレジアからの遺産のようです。
母と娘の2代に渡るコレクションを総称し「マリー・アントワネットCOLLECTION」と呼ばれています。
マリア・テレジアは、漆器をこよなく愛し「私はダイヤモンドより漆器よ」という、漆器屋には感涙もののセリフを残したと言い伝えられています。
この言葉の真偽は分かりませんが、宮殿内に「漆の間」を作り、日々、漆器を愛でていたことは紛れもない事実です。
そして、このコレクションと漆器への情熱が娘マリー・アントワネットに引き継がれていきました。
マリー・アントワネットの漆器コレクション
私の愛蔵書の1つがこちら。
母と娘の2代に渡って集められた漆器の数々の画集です。
ヨーロッパを魅了した数々の漆器の画集とも言えます。
ページ数は240ページに及び、収録作品は70作品以上と、なかなか立派な画集となっています。
フランス語で書かれているので、内容が理解しきれないことが残念ですが、私のような漆器のプロにとっても勉強になる画集でもあります。
当時は、今の漆器のように商品を在庫して販売するという形は少なく、基本的には、富裕層からのオーダーで作るというスタイルが主流でした。
こちらの品物などは、確実にヨーロッパからの特注品、もしくは、ヨーロッパに輸出することを想定して作られた漆器だと思います。
こちらは、上部の箱は日本の漆器そのものの感じですが、脚は日本製でない感じがします。
(箱は硯箱ですね。硯箱とは知らずに美しいと感じたのだろと思いますが)
中国製でしょうか?
日中合作でオリエンタルな品物に仕上がっています。
これらは、純粋に国内向けの漆器のようですね。
ヨーロッパ向けにアレンジされた漆器だけではなく、このように日本で使うことを想定された漆器も多数コレクションされています。
また、文献によると、このマリー・アントワネットコレクションは、日本そのものの漆器比率が高いことが特徴のようでして、漆器そのものが好きであるだけでなく、日本の漆器が好きであったことが窺い知ることが出来ます。
なんか嬉しい事実ですね。
JAPAN=漆器
辞書でJAPANを調べますと、漆器という意味が含まれています。
これは、まさにこの中世、シルクロードを渡り、数多くの漆器が美術品としてヨーロッパに渡ったことによります。
中国の磁器、日本の漆器が特に人気が高く、磁器をCHINA、漆器をJAPANと呼んでいたとのことです。
ヨーロッパには漆がありませんので、ジャパニングと呼ばれる技法も開発されました。
漆に似せた樹液や油の塗装技術の開発や、日本の漆器を加工し、自分たちの使いたいものを作る(再加工)ことを指し、そういう学校もありました。
(こちらがジャパニングの教科書)
(こちらがジャパニングにより再加工されたもの)
ピアノ塗装の源流は、このジャパニングと聞いています。
ピアノは、漆器に憧れた塗装技術と思うと大変に感慨深いですし、日本の誇りを感じます。
このような経緯がございますので、ヨーロッパの美術館やアンティークショップに行くと、古い漆器が結構並んでいたりします。
マリー・アントワネットの漆コレクションは、2016年に六本木ヒルス「森アーツセンターギャラリー」にて大々的に展示会が行われました。
ぜひ、また次の機会がございましたら足をお運びください。
私もまた観に行きたいです。
〈参考文献及び画像出典元〉
Les laques du Japon
collections de Marie-Antoinette
Reunion des Musees Nationaux
(最後の2画像以外)
japan 蒔絵 宮殿を飾る東洋の煌めきを
京都国立博物館
(最後の2画像)
=最近の投稿=
8|平安堂のひな人形
9|オンラインの奇跡
10|漆の漢字の秘密
11|漆はユニークだ
12|在庫は積み上げろ!
13|成田山新勝寺の豆まき
14|漆器は名脇役 PIAGETイベントにて
15|QLOCLTWO 銀座蔦屋さんコラボモデル
16|聖地高野山で宿坊体験