ひな人形の販売は、ここ7〜8年の取り組みです。
お陰様で、大変に好評を頂いており、毎年、取り扱いも増え、励みにもなっています。
一般的に、漆器屋さんが「ひな人形」を販売しようと思うと、「ひな人形」そのものを漆器で作ろうとします。
実際、そのような漆器屋さんも多いです。
これはこれで素晴らしい漆器なのですが、私の漆器を作るコンセプトに「あまり無理しない」と言いますか、何でも漆器で作ろうとしないという部分ございます。
人形は人形屋さんや人形職人さんが作られたほうが良いものである可能性が高いですし、漆器である必然性もそれほど高くもありませんし、そもそもそれが自然だと。
逆に、私が前々から思っていた部分は、人形屋さんは人形づくりに全力投球ですので、付属品であったり、それ以外のところに漆器屋としての存在価値を表現出来ないのかなと。
付属品を手抜きしているとは思っていませんが、これもまた、前述の領分の話ではありませんが、逆に、こちらに一日の長があるではないかと。
あと、もう一つはサイズ感ですね。
「大きいこと=素晴らしいもの」
という価値観が強そうな業界ですが、やはり、今のお客様の多くは、コンパクトで良いものを求めていらっしゃるのではないかと。
このような想いがあっての製作となりましたので、、コンセプトはあっさりと決まり、
- 人形は人形屋さんにお任せし、良いものを提供して頂こう。
- 漆器屋らしい、平安堂らしい付属品をしっかり提案することで、ひな人形の魅力を更に高めよう。
-
コンパクトな設計にし、現在のライフスタイルに受け入れてやすいデザインにしよう。
リビングや玄関などに自然と馴染んでいくデザインであり、それでいて、節句という「ハレの日」としての格調を感じさせるデザインにしよう。
となりました。
現在はバリエーションも増えてきましたが、最初に投入したデザインはこちら。
(人形の着物は少し変化していますが)
一般的な屏風を背景にするのではなく、桃の花を屏風のようにみたてた「花屏風」をベースデザインにいたしました。
「花屏風」にすることで、現代的であり、リビングなどにもフィットする、コンパクトで華やかな「ひな人形」が提案できるのではないかと考えました。
敷板は、華やかな金の扇。
もう一つは、長方形と正方形を組み合わせたステージですが、シャープさを表現するために、裏面に面取りを行い、少し浮いているように見えるデザインを採用しました。
(花屏風の感じ、ステージが少し浮いているイメージ、伝わりますでしょうか)
もっとも重要な「ひな人形」は、かねてから親交のありました「吉徳」さんにご相談。
色々と吟味を重ねた結果、柿沼東光さんが製作する「江戸木目込人形」を選ばせて頂き完成。
人形業界の詳しい勢力図までは存じ上げませんが、「吉徳」さんは、最大手の一角であることは間違いありませんので、抱えてる作家さん職人さんのレベルも高く、品質面でも安心です。
「吉徳」さんは、なんと創業が1711年!!
すでに300年の歴史を重ねており、アフターケアなども考えますと、お客さまにとっても安心なブランドを取り扱えることとなり、弊社としましても素晴らしいお取引となりました。
(吉徳監製 柿沼東光作 江戸木目込人形/品の良い顔立ちが気に入っております)
「現代的でありながら、格調をしっかりと維持する」
個人的には、きちんとコンセプト通りに出来たのではないかと。
平安堂らしさを表現でき、平安堂がやる意義も出せたのではないかと思っております。
平安堂が作らなくても、どこかの漆器屋さんが作っている付属品ですので、漆器のマーケットを新しい提案で大きくするという弊社の目標とは少し異なる事案ではありますが、「らしさ」を上手く表現できましたので、長々と記事にさせて頂きました。
上手くいくいかないの連続ではありますが、このようなケースがありますと励みになります。
また、「らしさ」をしっかりと追求し、皆さまに必要とされる漆器店であり続けられるように精進したいと思います。
平安堂のひな人形特集ページはこちらです。
毎年12月下旬ごろから3月まで販売しております。
=過去の投稿=
0|プロローグ
1|めし椀のススメ
2|黒越誠治という男
3|なぜ漆器が栄えたのか?
4|ヒルサイドテラス50年の価値(1)
5|ヒルサイドテラス50年の価値(2)
6|ハイジュエリーと漆
7|辛抱を学んだ龍シリーズ