ヒルサイドテラス|50周年の価値(1)

2019年11月8日、ヒルサイドテラス50周年を記念した祝典に参加してきました。

ヒルサイドテラスというのは、ご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、代官山にある商業施設で、平安堂の本店も、このヒルサイドテラスG棟にございます。
いわゆる店子としています。


(ヒルサイドテラスG棟。弊社の入居している建物です)

店子だから言うわけではなく、でも店子だから分かる部分ありますが、ヒルサイドテラスという存在、それを運営している朝倉不動産を私は少なからず尊敬しています。

50年、50周年と聞いて、長いと感じる方、短いと感じる方、人それぞれあると思います。
日本は老舗が多いですし、弊社の歴史も、ヒルサイドテラスより長いですので、50年という時間軸がどうこういう話ではないです。

50年に渡る長期的な街づくり
一貫したデザインによる10数棟の建築群

尊敬すべきポイントは多々あると思うのですが、集約するとこの2点に私は凄みを感じています。

「長期的な街づくり」という部分をもう少し細かく説明します。

ヒルサイドテラスという建築群を見ていますと、正直、無駄なスペースが多いです。
また、店子(テナント)という部分でも、もちろん、皆さん、立派なSHOPが軒を連ねているのですが、決して、時流に乗っているブランドが多数を占めている訳ではありません。
代官山というファッション最先端の街の中核施設の割には、時代を追っていない雰囲気があります。

大規模再開発となると、しっかりと公園を作ったりなど、公共スペースも充分にあり、そういう意味では、最新の商業施設も無駄と呼べるスペースはしっかりあります。
(便宜的に無駄と書いていますが、直接的にお金を生み出さない場所と思ってください。公園は無駄じゃないですので。)

ヒルサイドテラスは、高層ビルでもなんでもないにも関わらず(商業部分は2階まで。建物全体でも4階の低層建築)、そこかしこに無駄なスペースがあります。
直接的な家賃収入、相当、犠牲にしていると思います。


(このような感じで、余裕しか感じないです)

しかしながら、その犠牲があることにより、素晴らしい街の景観、都会のど真ん中とは思えないゆったりとした時間の流れを作り出し、時代を超えた価値に繋がっているように思います。

また、時流に乗ったトレンドブランドが少ないという部分、テナント選びにも特徴があると思っています。
これも、端的に言えば、直接的な家賃収入を犠牲にしているのではないかなと。

代官山のメインストリート、旧山手通りに面した一等地。
家賃を高くしても、ノリノリのブランドであれば借り手はつくだろうと推察しますが、そういう発想もあまりなさそうです。

一度、関係者の方に聞いたことあるのですが、テナント選びは、長期的な「街づくり」の観点から選んでいますと。
家賃を高くしても時流に乗ったブランドなら借りてくれると思う。でも、テナントが5年で入れ替わる。
10年経ったら全部変わっている。
そういう街にはしたくない。
また、そうなるとファッションばかりのテナントになってしまい、街の魅力が落ちてしまう。
ファッションも必要だけれど、ライフスタイルやインテリア、アートなど、バランスを考えてテナントを選んでいますと。
だから、平安堂さんみたいなテナントは大事だし、入って欲しかったとも言って頂きました。

感涙ものです。

時流に乗ったファッションで街の魅力を発信することも1つの価値観だと思いますし、まったく否定しません。
むしろ、それが普通に思いますし、教科書通りのようにも思えます。

ただ、ヒルサイドテラスに流れる、商業主義から少し超越した価値観。
詰め込まないことであったり、時流を追わない姿勢。

もちろん、回り回って、それが商売になるということもあるでしょうし、ボランティアで街づくりしている訳でないことも理解していますが、
ブレることのない、確立された姿勢を感じることができます。

これを50年やってきた。
この50年は重みあると思います。


(50周年パーティで挨拶されたオーナーの朝倉さま)

バブルがあり、バブル崩壊があり、IPOバブルがあり、リーマンショックがありと、今は環境良さそうですが、決して常に良いとは思えないこの50年。
オーナー家が持つ、代官山への揺るぎない愛と言いますか、街づくりの思想を感じます。

長くなってしまったので、もう一つの「凄み」と思っています「一貫したデザインによる10数棟の建築群」については、
改めて書かせて頂きたいと思います。

50年という単なる時間軸ではなく、「ブレることのない」50年の価値。
弊社は100年企業ではありますが、見習いたいものです。

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ABOUTこの記事をかいた人

漆器 山田平安堂とHeiando Barの代表取締役。 昔はお酒が飲めなかったのに、今ではお酒マニア。 漆器とお酒の魅力を伝えます!