漆(うるし)のお話|漆の漢字

「うるし」を漢字で皆さまは書くことが出来ますか?


(これが漆の漢字です。さして上手くないことは自覚していますが書いてみました)

この漢字、学校で習うんでしたでしょうか?
私は漆器屋の息子として育ちましたが、お恥ずかしいことに、平安堂に入社するまで「漆」の漢字、正確に書けていなかったです。。
今となっては情けない限りです。

さて、この「漆」という漢字ですが、意味するところは、「うるしの木」及び、「うるしの木から採取された樹液」ということになります。
辞書で調べた訳ではありませんが、間違いないと思います。

漆の木から採取された樹液である漆を器物に塗装すると、手前どもが扱っている「漆器」になるということですね。

前置きが長くなってしまいましたが、この「漆」という漢字ですが、非常に興味深い漢字になっています。

桜・欅・松・楓・杉・梅・檜・栃・柳・・・
これらに共通するものは?
馴染み深い樹木の名前であり、言うまでもなく「木へん」で始まる漢字たちです。

樹木の名前は、私の知る限り、全部「木へん」で始まります。
漢字博士ではないので100%と断言は出来ませんが、私は樹木を表す漢字は「木へん」だと思っています。
むしろ、そのために「木へん」があるのだろうと。

「漆」だけは違うんです。
漆の木がちゃんとあるのですが、漆の木だけは「さんずい」なのです。


(これが漆の木です。樹齢10年くらいだと思います)

もちろん、「漆」という漢字をよく見ると、小さく「木」も入っています。
それでも、やはり「さんずい」がでで〜んと存在感を示していますし、決して「木へん」の漢字に分類されることはございません。

「漆」という漢字を分解すると、「さんずい」と「木」と「水」になります。

「さんずい」には「滴る(したたる)」という語源と言いますか意味があるとのこと。

つまり、漆という漢字は、
「木から滴る水」
という意味になるということです。

「木から滴る水=漆の樹液」
ということですので、漆の木は、木そのものより「樹液としての漆」が非常に大切であり、そのような背景から「さんずい」が当てられたんだなぁと感慨深く、そして大いに納得したものです。

漆の樹液を使いだしたのは9000年前とも言われております。
代替えの利かない、非常に特徴ある天然の塗料であり接着剤である「漆」は、我々日本人の生活に組み込まれ、そして「木へん」ではなく、「さんずい」で「漆」という漢字があてがわれた。

壮大でロマンチックな話です。
そう感じるのは私が漆器屋だからだけかもしれませんが。。。

一般の方々には「へぇ〜」くらいの豆知識かもしれませんが、私には漆の歴史がこの1文字に凝縮されているように思えてなりません。

漆という漢字の不思議を今回は語らせて頂きました。
漆には様々な「へぇ〜」がありますので、また、折をみてご紹介させて頂きたいと思います。

=過去の投稿=
0|プロローグ
1|めし椀のススメ
2|黒越誠治という男
3|なぜ漆器が栄えたのか?
4|ヒルサイドテラス50年の価値(1)
5|ヒルサイドテラス50年の価値(2)
6|ハイジュエリーと漆
7|辛抱を学んだ龍シリーズ
8|平安堂のひな人形
9|オンラインの奇跡

ABOUTこの記事をかいた人

漆器 山田平安堂とHeiando Barの代表取締役。 昔はお酒が飲めなかったのに、今ではお酒マニア。 漆器とお酒の魅力を伝えます!